AIとウェルビーイングに関する生活者調査
日々刻々とAIが進化している時代。
生活者にとっても、
AIは瞬く間に日常の一部となりました。
では、はたしてAIは人を幸せにしているのでしょうか?
NECは、この「AIと人の幸福な関係」について、調査を実施。
AIと人の現在進行形を理解することで、
これからのAIのあり方、
人とAIの付き合い方の意外な形が、見えてくるかもしれません。
人がAIに求めていたのは、||「全自動」ではなかった?
本調査の目的
本調査は、AIの普及が生活者の幸福感(ウェルビーイング)にどのような影響を与えているのか、また今後のAIの実装がより進んだ社会において、人とAIがどのような関係性を築いていくべきかを、定量データと会議での討議を通じて明らかにするものです。
調査概要
「どれだけ使うか」より「どう使うか」?
人は、AIによって幸せになったのでしょうか? プライベートでのAI利用率は 7割以上 に達していますが、幸福感が「向上した」回答者は約18.2%、「低下した」は6.0%。合計 24.2% の人が、幸福感に変化があったと答えました。差し引きで見ると幸福感は純増(約+12.2pt)していますが、利用率7割超という数字に対して幸福実感の広がりはまだ限定的であり、「どれだけ使うか」ではなく「どう使うか」なのかもしれません。
図1:生活者全体(n=2,057)における幸福感の動向
AIを日常的に利用する中で、幸福感(生活全体の幸せ・心の豊かさ)の変化について調べたところ、「幸福感が向上した」は18.2%、「幸福感が低下した」は6.0%となり、AIによって幸福感の変化を感じた層は合計24.2%だった。一方で、「変わらない」が75.7%と多数を占めており、現時点ではAI利用が幸福感に与える影響は限定的であることがうかがえる。
AIが人間の達成感を奪っている?
同じAIを使いながらも、手応えを失う人と得る人がいます。AI利用によって「思考の自由度」「思考の自律性」は向上したと感じる人が多い一方、「達成感」については減ったと感じる人が優勢。「多少手間がかかっても自分の力でやり遂げたい(プロセス重視派)」は55.5%、「AIに任せても早く結果を出したい(結果重視派)」は 44.5% で、プロセス重視派の 63.7% が達成感の低下を感じています。
ただし、プロセス重視派であっても、AIと対話・協働して使う層は幸福スコアが高い(幸福22.1%/不幸5.3%)のに対し、対話・協働型以外の使いかたを行う層はむしろ不幸感が強い(幸福8.3%/不幸5.9%)ということがわかりました。プロセスを重視する人ほど、AIを避けるのではなく、うまく対話しながら使うことが幸福感につながっています。
図2:AIを使うようになってからの実感
AIによって「思考の自由度が広がった」(70.1%)、「主体的に物事を進められるようになった」(67.9%)というポジティブな回答が見られた一方で、達成感については「自分でやり遂げたという達成感が減った」(58.4%)という声が優勢となった。
図3:プロセス重視派に起きる「手応えの喪失」は、AIとの対話で解消
AIによる達成感の増減について、プロセス重視派では「達成感が高まった」が36.3%、「達成感が減った」が63.7%となった。ただしプロセス重視派においても、AIと対話・協働しながら活用している層では、幸福感が22.1%となっており、対話型以外の使いかた(8.3%)よりも7倍高い結果となった。
答えを出すAIより、||一緒に考えてくれるAI?
対話しながらAIを使う方が幸福感を得やすいという結果でしたが、人は、「全自動ですべてをやってくれるAI」を求めていたのではないのでしょうか?今回の調査では、実際に求められているのは全自動型ではなく、伴走型・サポーター型の役割であることが見えてきました。
まず、AIの使い方について。使う人の半数は「AIが出したものを自分で確認・修正して使う(確認・協働型)」が50.5%、「対話しながら、自分の考えをまとめていく(対話型)」が 28.6% で、合わせて 79.0% を占めているのに対し、「AIの答えをそのまま使う(代替型)」はわずか 11.7% にとどまります。
図4:AIの使いかた(利用スタイル)
AIが出したものを自分で確認・修正して使う「協働型(確認)」が50.5%、AIと対話しながら自分の考えをまとめていく「協働型(対話)」が28.6%と、全体の79.0%を占めている。AIの答えをそのまま使う「代替型」は11.7%、試行錯誤しながら新しい使い方を探す「探索型」は9.3%と少数となった。
また、AIを使い込むにつれ、対話型の使い方が増える一方、確認型の割合は利用頻度によらずほぼ一定であり、「最終判断は自分の手に残したい」という意識の表れと考えられます。
図5:AI利用頻度と利用スタイルの関係の変化
AIの利用スタイルについて、探索型の中でも「ほとんど使っていない」層は22.8%だったのに対し、「頻繁に使っている」層では3.3%にまで減少した。一方で協働型(対話) は、利用頻度が低い層は16.2%だったが、頻繁に使う層では31.7%まで増加。協働型(確認)は利用頻度に関わらず約50%で、一貫して高い割合を保っている。
さらに、旅行計画や健康管理などの領域では、AIへの委任に前向きな人ほど、その未来を幸福と予測する傾向が見られました。しかし、人とのコミュニケーションや人とのつながりの代行については、幸福感にはつながりにくいということがわかりました。
図6:AIエージェントへの委任意向(5~10年後の未来予測)と、その際の幸福感予測
AIエージェントへの完全委任を望む人は各領域で3~4%にとどまる。特に「SNS・コミュニケーション」の領域では32.4%もの人が「まったく任せたくない/自分でやりたい」と回答した。一方で、「旅行の計画・手配」や「健康・体調管理」では、AIに委任した未来の幸福感予測が比較的高い。
奪われたくないのは、||情報より、自分らしさ。
AIに対する不安といえば、「偽情報やプライバシーを脅かされること」だと言われてきましたが、今回のデータでは、偽情報・プライバシーへの不安については、幸福層・不幸層の差は3ポイント前後にとどまり、ほとんど違いは見られませんでした。対して、実際に幸福感を左右しているのは、「自分らしさが脅かされる」という不安でした。
「不幸になった」と感じる人が多いのは、「AIに行動を方向づけられる不自由さ」「人と直接話す機会が減る寂しさ」「自分のスキルが衰える不安」といった、自律性・主体性が脅かされる不安に対してであり、こちらは幸不幸の間に17.4〜23.5ポイントの大きな差が見られます。企業には、情報基盤に関する不安への対応に加え、この主体性の不安への配慮が求められていると言えるでしょう。
図7:AIに対する「目立つ不安」と「幸福感を下げる真の不安」の対比
AIに対する不安として、「偽情報・フェイクへの不信感」や「個人情報・プライバシーへの不安」は、全回答者の3~4割が共通して感じている。「AIに行動を方向付けられる不自由さ」(32.8%)や「人と直接話す機会が減る寂しさ」(34.4%)の項目では、 AI利用によって不幸になった層の不安割合が特に高い。
関わる不安が幸福感の低下と結びついている可能性が示された。
いちばんAIを使う世代が、||いちばん人を信じている?
最もAIを使いこんでいる世代も、キャリアや進路など人生の選択に関しては、他世代以上に「人」を信じる傾向が強く見られました。
10代はAIの利用率が最も高い一方、AIへの不安感も他世代より強く感じています。一方で買い物については、他世代と比べて4.6ポイント以上、健康についても14.8ポイント以上高く「人を信じる」と回答。AIと共に育った世代だからこそ、AIに頼る部分と人に頼る部分の境界線を理解しているのかもしれません。AIを使いこなす世代ほど人を大切にするという構図は、次世代の共生モデルの原型として捉えることができます。
図8:AI活用の実態(年代比較)
10代は生成AIの日常的な利用率が80.6%と全世代で最も高く、「AIによって幸せになった」と回答した割合も31.8%と他世代を上回った。一方で、「買うもの・選ぶものの相談は、AIより人を強く信じる」(24.7%)、「健康の判断は、AIより人を強く信じる」(42.4%)の回答も他世代より10ポイント以上高い。
完璧を求めすぎると不幸になる?||AIとの柔軟な向き合い方。
また、AIが誤った結果を出す不完全さに対し、完璧を求めず、寛容に受け入れる姿勢がある人ほど、幸福が増幅する傾向も見られました。
AIに対して常に正確性・完璧さを求める層は、幸福になった人の割合はある程度あるものの、不幸になった人の割合も平均の約2.1倍と高くなっています。対して、利便性重視・柔軟に受け入れる層は幸福スコアが高く(幸福27.9〜32.0%、不幸3.9〜5.8%)、完璧を求めず寛容に受け入れる姿勢が幸福感につながりやすいということが言えます。
図9:AIが誤った情報や不完全な結果を出す可能性に対する考えかた
AIに完璧さを求める人ほど「不幸になった」と回答する割合が平均より高くなった(12.6%)。AIの誤りを一定程度許容しながら活用する人では「幸せになった」と回答する割合が32.0%(平均の1.8倍)に達し、AIの受容と幸福感には関連がみられる。
安全性はもう前提?||いまAIに携わる企業に求められること。
では、AIに携わる企業に求められているものは何でしょう?
よく懸念される安全性やプライバシー保護については、幸不幸に関わらず土台として誰もが期待するもの。
加えて、不幸感を抱く層は「人間らしさの尊重」「公平性」を求める傾向が強く、幸福感を抱く層は「何のためのAIか」というビジョンの発信を求める傾向が強くあります。企業の発信は、①安全性、②公平性・人間らしさ、③目的・ビジョン、という欲求の階層を踏まえて設計する必要があるようです。
図10:AIを活用・提供する企業に期待する発信と、発信期待に基づく“欲求の段階的構造”
AIを利用して不幸になったと感じている層は、「人間らしさの尊重」(32.8%)や「公平さ」(20.0%)など、AIを安心して利用するための基盤となる情報発信を重視している。反面、幸福になった層は「目的・ビジョン」(18.1%)が高く、AIがもたらす価値や将来像に関する発信を求める傾向がみられた。
人とAIが共生する未来へ
AIによる効率化は生活に浸透し、自由と選択肢を広げた一方で、手応えの喪失という葛藤を生んでいます。この葛藤を乗り越える鍵は、AIと対話し、協力していくという共生関係。AIを提供する企業が担うべき役割は、安全性だけではなく、その先にある目的・ビジョンの発信だと言えます。
AIの実装がより進んだ社会に必要なのは、効率化の先で、人間がより人間らしく納得する答えを自ら導き出すための「余白」を設計すること。AIを全自動のツールにせず、人が対話を通じて主体性を取り戻す──そのための関係性の設計こそが、AIを提供することによる真の社会的価値だと言えるでしょう。
2,057名の生活者調査データに加え、詳細な分析やインサイトをご覧いただけます。
本レポートの企画・制作・編集:
NEC ブランドエクイティマネジメント室 担当:鈴木、若山
NEC BluStellarブランドマネジメントグループ 担当:浅井、権田