働く人のAIとウェルビーイングに関する意識調査
仕事の現場で、
あたりまえのようにAIが存在する毎日。
効率化は進み、たしかに仕事は速くなりました。
では、働く人のやりがいは、
その分、高まっているのでしょうか?
NECは、この「AIと働く人のウェルビーイング」について、
組織で働く人々を対象とした調査を実施。
効率の先で、人と組織に何が起きているのか、
その実態を見ていきましょう。
幸せな働き方と、||組織のAI活用の関係
本調査の目的
本調査は、業務におけるAIの活用が、働く人の満足感・幸福感・達成感にどのような変化をもたらしているのかを、定量データと個人・組織それぞれの視点からの分析を通じて明らかにするものです。
調査概要
AIに満足しても、幸せだとは限らない?
AIに満足することと、仕事の充実感・幸福感は、必ずしもイコールではないことがわかりました。業務でAIを使っている人に、その効率や成果への満足度を聞いたところ、「非常に満足」15.8%、「やや満足」51.1%。満足層は合計66.9%。ところが、AIを活用した現在の仕事に幸福感・充実感を感じている人の割合は49.7%。5割に届きませんでした。
さらに、2つの設問を掛け合わせると、「満足していて、幸福でもある」人は4割強。対して、満足しているのに幸福感は上がっていない人が23.0%。ざっと4人に1人が、効率には納得しながら、幸せにはたどり着いていないことになります。では、この満足感と幸福感のギャップは、いったいどこから生まれているのでしょうか。
図1:AI活用による効率・成果への満足度と、働くことの幸福感・充実感の比較
AI活用による満足層は合計66.9%(非常に満足15.8%+やや満足51.1%)に達する一方、AIを活用した働きかたに対する幸福感・充実感を感じている人は49.7%(非常に感じる11.7%+やや感じる38.0%)にとどまり、「満足感」と「幸福感」には17.2ポイントの差が生じている。また、「満足感」×「幸福感」のマトリクス分析においては、約4人に1人は「満足はしているが、幸福感は上がっていない」という層が存在した。
作業ツールと捉える人ほど、幸福感は下がる?
幸福感の差は、AIを「どう位置づけるか」で変わるようです。AIを「指示に対し正確・迅速にこなす『作業ツール』」と捉える人の割合は、幸福感を感じている層で11.4%、感じていない層で26.0%。逆に「一緒に考える伴走パートナー」と捉える人は、幸福な層のほうが 7.8ポイント 高いという結果です。これは生活者調査の結果とも通じており、AIを良い相棒と考えて伴走する人ほど幸福感が上がる傾向にありました。
図2:AIの捉え方別に見た幸福感の傾向
AIを「作業ツール」ととらえる人の割合は、幸福感を感じない層(26.0%)で高く、幸福感を感じる層(11.4%)の2倍以上となった。一方で「伴走パートナー」派は幸福な層で7.8ポイント高かった。AIを良き相棒として協働する人ほど、幸福感が高い傾向がうかがえる。
達成感がある人とない人の分かれ目は?
一方、AIを使ったときの達成感と幸福感は、はっきり連動しています。AIを使って業務を終えたときの実感については、「達成感が高まった」が53.4%、「減った」が46.6%。さらに達成感が高まった人の幸福感は58.0%、減った人は40.2%。その差は約18ポイントにのぼります。
ここで分かれ目になったのが成長実感です。AIを利用することで達成感が高まったと感じられた人の79.9%がスキルの成長も実感しています。一方、達成感が減ったと感じている人の成長実感は、41.0%にとどまりました。つまり、達成感を感じることは成長を実感できることと強く関係していたのです。
図3:AI利用後の達成感と幸福感の関係
AI利用時の達成感は幸福感と連動し、達成感が高まった人(53.4%)の幸福感は58.0%、達成感が減った人(46.6%)の幸福感は40.2%となった。達成感に影響する要素として「成長実感」が挙げられ、「AIを使うことで自分の知識やスキルは伸びていると感じる」という設問に対し、達成感の高まりを感じている層は79.9%と高い値を示しているのに対し、達成感の減少を感じている層は41.0%と、38.9ptもの差が生まれた。
企業におけるAI活用のルールは、幸福感にどう影響する?
組織は、AI活用のルールを定めるべきなのでしょうか? 調査によると、組織内でAI活用のルールがないという人の幸福感は、比較的低いことがわかりました。「状況に応じて見直している」「使い方を議論する場がある」「どこまで任せる/任せないかの範囲が共有されている」「現場の声がルールに反映される」の4項目で聞いたところ、どれも当てはまらないという人の幸福感は25.8%で、全体の49.7%を大きく下回っています。また、その幸福感は1項目該当しただけで 45.6% へと跳ね上がり、4項目すべてに該当する人では73.9%。ルールの適用と働く人の幸福感の間では、かなり強い関係が見られました。ただし、4項目すべてに当てはまる組織は全体の30.6%。あとの7割の組織は、まだその環境を用意できていないようです。
図4:AI活用のルール整備と幸福感の関係
「組織内でAI活用のルールがない」という人の幸福感は比較的低く、25.8%にとどまった。一方、「状況に応じてルールを見直している」「AIの使い方を議論する場がある」など、持続的に組織内AIルールを運用しているという項目が1つでも該当している場合の幸福感は45.6%となり、4項目すべて該当しているケースでは73.9%まで高まった。
AI環境をつくる手間は、負担? 前向き?
AI環境を整えるには、現場に負担がかかるのでは? と心配する組織もあるでしょう。しかし、意外と現場は前向きでした。AIに読ませるためのデータ整備の手間について、「割に合わない」と答えた人は 8.2% にとどまり、「手間は増えたが必要なこと」「むしろ自分の手間は減っている」が合わせて76.4%。負担はあっても、AI環境を整えることにはポジティブに捉えている人が多数でした。
図5:AI環境整備の手間に関する調査結果
AIに読ませるためのデータ整備の手間に対する受け止めについて、「割に合わない」と答えた人はわずか8.2%にとどまり、「手間は増えたが必要なこと」「むしろ自分の手間は減っている」と、負担を前向きに受容する層が76.4%を占めた。また、AI Readyに向けた手間を前向きに受容できる層は総じて幸福感が高く表れた。
効率化で生まれた時間を、どう活用する?
AIで効率化して生まれた時間はどこへ行くのでしょうか。その時間をどのような価値創造に転換したいか?という質問では、「人にしか出せない仕事の強化」が35.5%でトップ。「より創造的な仕事」「新しい挑戦の時間・機会」がそれぞれ 3割程度 で続き、「効率化が目的なので、そこは考えていない」という人は 10.3% にすぎませんでした。
ところが、効率化によって生まれた時間の活用については、「すでに価値創出に活かせている」と答えた人は、わずか15.4%。「やりたいが、そのための仕組みや受け皿がない」という人が 27.5% にのぼります。
では、この差と幸福感の関係は? 価値転換できている人の幸福感は84.8%。対して、やりたいのに仕組みも受け皿もない人は31.2%。意欲がありながら受け皿がない場所で、幸福感はもっとも下がるということがわかりました。組織には、効率化の先の設計が求められていると言えるでしょう。
図6:AIによる効率化で生まれた時間の活用実態
「すでに価値創出に活かせている」は15.4%にとどまる一方、「やりたいが、そのための仕組みや受け皿がない」が27.5%にのぼり、意欲と環境の差が浮かび上がった。幸福感との関係で見ると、「意欲がありながら、仕組みや受け皿がない」という場合にもっとも低い数値(31.2%)が出ており、すでに活かせている層の幸福感(84.8%)と比較しても大きな差がうかがえた。
AI時代、人として最後まで手放せないものは?
AIを使い続けた5年後・10年後を想像してもらうと、「長期的な記憶力が低下すると思う」は約4割。批判的思考、問題解決能力についても、それぞれ3割強が低下を懸念しており、3つの認知能力すべてで「低下する」が3割を超えました。ただし、問題解決能力についてだけは「高まる」という見方もありました。
図7:AI時代、効率化の先に残る「人にしか出せない価値」
AIを使い続けた5年後・10年後を想像したとき、「長期的な記憶力が低下すると思う」という回答が38.4%と、4割近くまでに及んだ。批判的思考、問題解決能力についても「低下する」が3割を超えた。
では、効率化の先に「人にしか出せない価値」として残るのは何でしょうか。上位に並んだのは、「直接会って、表情や場の空気から相手を汲み取る力」「人と人との信頼関係・つながり」「相手の感情や本音を察する力」。対して「新しいものを生み出す創造性・発想力」は20%程度と、意外にも限定的でした。創造性が最上位に来そうな商品開発・サービス開発の職種でさえ、1位は「空気を汲み取る力(同率1位)」でした。人として「察する力」は最後まで手放せないと考える人が多いようです。
図8:AI時代に人へ残る判断と価値
AIが代替する利点としては、「自分では気づかない視点や結論に気づける」が39.2%で最多となった。一方、AIに頼らない利点では「自分で確かめ、納得したうえで決められる」が38.8%で最も多く、AIには新たな視点を期待するが、最終的な判断には自ら納得できることを重視している様子がうかがえる。また、人にしか出せない価値としては「空気から相手の意図を汲み取る力」(39.2%)が最多となり、属人的な技能に価値を見出す層が多いことが分かった。
図9:業務がAIで効率化された後、組織に残ると思われる「人にしか出せない価値」
総計で最多の回答は「直接会って、表情や場の空気から相手の意図を汲み取る力」(39.2%)だった。営業職(45.5%)やカスタマーサポート職(43.6%)では特に高く、対人業務において重視される傾向が見られる。一方、創造性が求められるような商品・サービス開発職や研究開発職でも同項目が最多(35.1%)となり、対人理解力が幅広い職種で重視されていることがうかがえる。
5年後、あなたはどう働いていたいですか?
最後に、未来の話を見てみましょう。AIによって社会がさらに変化した5年後から10年後。そのとき、どんな働き方を重視するようになると思いますか──この問いへの回答から、働く人は大きく6つのタイプに分かれました。
図10:未来の働き方意向を6タイプに分類
因子分析により「未来の働き方」を5つの重視軸に集約。因子スコアを用いて、回答者一人ひとりについて、5軸それぞれを「どれだけ重視するか」の点数に換算。5軸の点数の“持ちかた”が似た人同士をグループ化し、未来の働き方意向を6タイプに分類。
図11:AIが変える10年後の未来に、重視したい働き方
回答傾向から、働く人は「仕事も生活も派」「腕で生きる派」「成長大好き派」「社会のために派」「やっぱ人でしょ派」「様子見派」の6タイプに分かれた。最多は「仕事も生活も派」で20.7%、次いで「様子見派」が20.5%、「やっぱ人でしょ派」が15.8%。求める働き方によってAIに期待するものも異なることがわかった。
もっとも多いのが「仕事も生活も派」(20.7%)。ところが、この層の幸福スコアは平均並みでした。効率化の実感はあるのに、生まれた時間を価値に転換できておらず、「受け皿がない」という回答が全体より8ポイント高く出ています。効率化止まりの層と言えるかもしれません。「腕で生きる派」(16.0%)は、「答えが正しいか判断できないモヤモヤ」を強く抱えており、AIの答えを検証する手立てを組織が整えることが鍵になりそうです。「成長大好き派」(12.3%)には、AI導入後もあえて場数を踏む機会を残すことで、不安を成長実感に転換できるかもしれません。
「社会のために派」(14.8%)は、人数こそ多くないものの幸福スコアが 59.5pt と高い層。ただし組織のAI位置付けは効率化中心で、理想とのギャップが見られます。「やっぱ人でしょ派」(16.0%)は、生まれた時間を「人にしか出せない仕事」に振り向けたいという回答が全体より19ポイント高く、組織が「人の役割」を明確に定義することが、そのまま幸福度につながっていきそうです。そして「様子見派」(20.5%)は、まだ働き方を決めていない人たち。裏を返せば、これから決められる人たちでもあります。
求める働き方が違えば、AIに求めるものも違う。組織がすべきことも、AIの設計も、一様ではありえません。自分がどのタイプに近いのかを想像しながら読んでいただくと、打ち手の輪郭が見えてくるかもしれません。
図12:AI時代の働き方6クラスター分布
年齢別にみると、全体でもっとも多い「仕事も生活も派」は22~29歳が25.9%、40~49歳が24.7%が特に高い傾向。30~39歳は他世代と比べて各クラスター比が異なり、人間性/意義を重視する傾向で、「社会のために派」が18.9%、「やっぱ人でしょ派」が20.8%となった。また、幸福スコアが最も高く出たのは「社会のために派」で59.2%。
AI活用と働く人の幸福感に関する詳細な分析をご覧いただけます。
有識者による解説・提言
本レポートの企画・制作・編集:
NEC ブランドエクイティマネジメント室 担当:鈴木 章太郎、若山 拓巳
NEC コーポレートブランド&エクスペリエンス統括部 担当:浅井 恵美、権田 麻実